いつかのこと

さがしもの

さがしもの

さがす

ものを探すというのはなんだか楽しい
あー見つかった
あの瞬間が好きなんだろうな

見つからない

朝から私たちはずっと探していた
ぽっぽのトーマス
お気に入りで毎日のように遊んでいたのに
ふと気付くといなくなってた
心配そうに名前を呼ぶ
おもちゃ箱をひっくり返す
見つからない時は見つからない
このちいさな部屋の、どこをさがしてもいない
どこかにはいるんだろうけど
不思議なこともあるもんだ

さがしもの

題名だけ

本の題名を見ただけでレジに向かった
こんなことは珍しい
だいたい裏っかえして本のあらすじをさらっと読み、好みかどうか確かめてから買う
だけどこの本は違った
そこに答えがあるような気がした
ぽっぽのトーマスはまだ見つからない

さがしもの

さがしもの – 角田光代

小学校に入った頃から文字を読むのが好きだった
休み時間になると図書館に行って、絵本やらぶ厚い小説やら漫画やら、いろんな本を読んでいた
図書館に行く理由は特になかった
読みたい本があったというより、図書館に行くと読みたい本がふと現れた
あー見つかった
あの瞬間が好きだった
あの時読んだあの本は、元気かな
今どうしているんだろう
本にまつわる物語を読み進めるうちに、そんな思いが巡ってくる
今の私はどうなんだろう
本が好きだったあの頃と今、何が違うんだろう
もう一度読んでみたら、何か、少し分かるのかもしれない

あー見つかった

ふと、ピアノの上に置いてあるちいさなかばんが気になった
カタカタかた
音がする
開けてみると、ぽっぽのトーマスくんがこてんと横になっていた
あー見つかった
でも
いつのまに
どうやって入ったんだろうね