何にも、なんにも知らなかった
ただ思いつきで家を見に行き、一目惚れして家を買おうとなって…さて、どうしよう
家を買いたいという気持ちだけを持って、最初の打ち合わせに向かった
あの夏の終わりに訪れたのは、無印良品の家だった
夫が見つけてきた見学会、家のサイト、そのどれもが私には新鮮に映った
無印良品と言えば学生の頃、よく放課後に友達とふらり立ち寄った思い出がある
“干し梅”という、すっぱ甘いお菓子にはまっていて、制服姿でよく食べていた
梅干しは苦手なのに、なんでだろ
その干し梅と、透明の写真用アルバムがお気に入りだった
そんなことを思い出しながら、あの無印良品の家か…と、カタログを見てわくわくしていた
たくさんの資料が机の上に広げられる
聞きたいことも分かっていない私たちに、担当者さんがいろいろ説明してくれる
何にも、なんにも知らなかった
家を買うということ、完成までの道のり、かかる期間、家の金額やローン、土地の値段に施工費…
避けては通れないが、お金の話は正直あたまがパンクしそうになった
大きな、おおきな、大きすぎる買い物
干し梅とはわけが違う
でもどこか、無印良品のアルバムを手にした時の感覚に似たものを感じていた
なんの飾り気もない透明のアルバムに、さてどの写真を表紙にしようかしらとぐるぐる考える
最後はこの写真で、じゃあその前は…ぐるぐる考える
あ、そうか
このぐるぐるが好きだったんだ
アルバムという枠の中で、あーでもないこーでもないできるのが魅力的だった
無印良品の家なら
ぐるぐる作っていけるかもしれない
私たちは0だ
私たちの家づくりは
ほんとうに0から始まった