はんぶん
そのままだったら、はんぶんだった
はんぶんにしたら、ひろくなった
大変なことに気づいてしまった
上棟してしばらくたったある夜
夫の顔が大変さを物語っていた
夫「半分しか開かないよ」
何のことかわからなかった
ここ、と指差したのは、キッチンのおおきな引き戸だった
シミュレーション
キッチン後ろの背面収納
大きな引き戸で隠せる収納
なんてすてき
そう思って迷わず付けた
その迷わずがいけなかった
冷蔵庫も棚も一面隠せるように4枚の引き戸を付けた
扉のレールは2本私あー
どんなに頑張っても扉2枚分しか開かない
気づかなかった
気づいてしまった
ここから夫婦でシミュレーション大会が開催される
私「料理中に冷蔵庫のところは?」
夫「開けておきたい」
私「朝急いでいるときは?」
夫「多めに開けておきたいね」
私「2枚分の開きで私たち並べる?」
夫「ちょっと狭いね」
私「電化製品は隠したい?」
夫「よく考えたらそうでもないね」
私「本当に全面隠したい?」
夫「よく考えたらそうでもなかったね」
答えは出ていた
2枚になったらちょうどいい
半分に減らした引き戸は、だいたい3枚分開いている
冷蔵庫、調理台、電子レンジ、コンロ、食器
行ったり来たり、本当に使いやすい
隠したかったわけじゃないことに気付けたことが大きいなと思う
ほどよい開放感が欲しかったんだな
食卓に座る子どもが振り返った
縦長のトースターに映る自分を見つけて笑っている
すやすやすや
乳白色がやわらかい引き戸
時々、2枚分閉じてみる
見えてるところと見えないところ
お昼寝中のちょっとした楽しみになっている