靴を買おうと言ってから何日経つだろう
まだ靴は買っていない
買いたい靴は決まっている
いたってシンプルな黒のスニーカーだ
いつからか、私には好きな雑誌があった
その雑誌を私は大切にしていた
中学生の頃、母に買ってもらったその雑誌は、流行とは少し違ったかもしれない
だけどページを開いた瞬間から、私は夢中になった
洋服も文字もモデルさんも、全部がやさしい色に見えた
目次、商品紹介の小さな文字、隅から隅まで読んでいた
その雑誌によく載っていたグレーのスニーカー
欲しくてたまらなかった
いつも欲しいなぁと眺めていて、履いている姿を想像してみたりして
だけど買うことはなかった
何でだろう
憧れすぎて、気付けば手を伸ばせなくなっていた
その好きな雑誌はいつのまにか廃刊してしまった
それでもどこかで憧れている
いつかあのグレーのスニーカーを履く時が来るかもしれないと思うと、なんだかわくわくしてくるのだ
まだ靴は買っていない
買いたい靴は決まっている