無印良品の家と暮らす

近所にパン屋さんがあったらいいね

文 / あさ
写真 / ぼくを
モデル / チョココロネ、シロクマTシャツを着た男の子

近所にパン屋さんがあったらいいね

所にパン屋さんがあったらいいね

近所にパン屋さんがあったらいいね
手をつないで、焼きたてのパンを買いに行こう

あぁーあ

雨が降り出しそうな午前中
朝から何もかも上手くいかず、ため息ばかりついている
まず、うっかり食パンを切らしていた
あぁーあ
代わりにと焼いたパンケーキは分量を間違ったのか、なぜかかたい
あぁーあ
食べた夫の顔も曇る
あぁーあ

近所にパン屋さんがあったらいいね

はため息が嫌いだ

私も好きではない
だからできるだけため息はつかないようにしてきたが、今日だけはもう止められない
あぁーあ


私たちはをつないで、焼きたての食パンを買いに行くことにした

お店の中には、焼き上がったばかりのパンが7割ほど並んでいる
いつもならゆっくりパンを選ぶところだが、食パンだけを手に取って足早にレジに向かった
雨が降り出す前に帰りたかったからだ

つないだ手に引っ張られる
彼が見つめる先には、整然と並んだチョココロネがあった
幼い頃よく食べたそのパンを見て、なんだか懐かしい気持ちになった

近所にパン屋さんがあったらいいね

んでもう笑ってるんだろう

家に帰って、録画していた彼のお気に入りのテレビ番組を流す
台所に行って片付けていると、聞こえてきた

あぁーあ

番組が終わったのだ
あぁーあ
ため息をついた彼は、私を振り返って笑った
思わず私も笑ってしまった
なんでもう笑ってるんだろう

暇になった彼は、お気に入りのおもちゃで遊び始めた
おもちゃがコロンコロンと転がっていってしまった
あぁーあ
彼はもう笑っている
なんて楽しそうにため息をつくんだろう

いつのまにか朝のことがどっかに飛んで行って、なんだか楽しい気分になっていた
そうだ
パン屋さんで買ってきたチョココロネを彼の前に出した
すぐに小さな手を伸ばす
まだ食べたことがない、ぐるぐる変わった形のパンをそっとさわり始めた
いい匂いがするのかな
顔を近づけてみたり
持ち上げてみたり

近所にパン屋さんがあったらいいね

、チョココロネが

小さな手にべっとり付いたクリームを見つめている
あぁーあ
やっぱり彼はため息をついて、笑ってた

近所にパン屋さんがあったらいいね

と窓を見ると、雨が降りだしている

あぁーあ
あぁーあ
小さな彼と目が合った
一緒に笑った
窓に当たった雨の音が、家にやさしく響いていた


近所にパン屋さんがあったらいいね
手をつないで、焼きたての食パンとチョココロネを買いに行こう